秋立ちて 幾日(いくか)もあらねば この寝ぬる
朝明(あさけ)の風は 手本(たもと)寒しも
安貴王(あきのおおきみ)
ほんの数日前までは暑くて寝苦しかったのに、ふいに明け方の風の寒さに目が覚める
夏の空気から秋のそれへと切り替わった瞬間に感じる繊細な変化をとらえる
安貴王は、志貴皇子(しきのみこ)の孫であり、志貴皇子ー湯原王・春日王ー安貴王ー市原王と歌人の系譜で繋がる
時代はくだって、平安時代の秋のはじめの歌で、
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ おどろかれぬる
紀氏(きのし)との関わりが深く、母は紀名虎の娘で、妻は紀有常の娘
同じく紀名虎の娘を妻に持つ在原業平とは、今で言う義理の兄弟の関係だ
藤原南家の流れで、北家のように政治的中心を握る家柄ではなかったことが、より文化面に力が注がれた理由かもしれない
百人一首にも名を連ねる
住江の 岸に寄る波 夜さへや
夢の通ひ路(ぢ) 人目よくらむ
よるは寄ると夜にかかり、よくは避くの意味も持つ