古歌集

万葉集・古事記・百人一首・伊勢物語・古今和歌集などの歌の観賞記録

さねさし 相模の小野に燃ゆる火の

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ヤマトタケルオトタチバナヒメ

 

さねさし   相模の小野に   燃ゆる火の

   火中(ほなか)に立ちて   問ひし君はも

 

これはヤマトタケルの妻オトタチバナヒメが歌ったもの

 

タケルとヒメ達一行は東の方の大和朝廷服従していない者達を服従させるための旅をしていた

 

途中、現在の三浦半島辺りから船で渡ろうと海に出ると嵐にあってしまう‥

その時オトタチバナヒメは、自らが荒れた海に入り、海を静めると決意した

海が荒れるのは海神の怒りのせいであるから、ヒメが犠牲になることで海神の怒りを鎮められると思った

そうして海に入水する前に詠んだのがこの歌だ

 

さねさし 相模の小野に 燃ゆる火の

          火中に立ちて 問ひし君はも

 

 この海へ来る前に一行は、相模の原に敵によっておびき寄せられ、草村の周囲から火を放たれ火攻めにあった

火が一行に迫る中、タケルは持っていた草薙の剣で周りの草を刈り払い、また火打ち石で向かい火をつけて火の勢力を弱めることに成功し窮地を脱した

ヒメはその時の事を最期の歌として歌った

 

--燃えさかる火の中で、貴方は私に問い掛けて下さいましたよね--

 

タケルへの感謝の想いを最後に海へ入り、やがて海は穏やかになった