古歌集

万葉集・古事記・百人一首・伊勢物語・古今和歌集などの歌の観賞記録

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

わが身ひとつは もとの身にして

月やあらむ 春や昔の春ならむ 我が身ひとつは もとの身にして 在原業平 『伊勢物語』第4段より 伊勢物語自体の作者は不詳で、だいたい平安中期くらいまでに作成されたか 和歌を中心にその歌の背景の物語を短編の章にして、物語全体で、ある男の一生を綴った…

宮も藁屋も 果てしなければ

世の中は とにもかくにも ありぬべし 宮も藁屋も はてしなければ 蝉丸 (私訳)世の中はとにもかくにも変わりゆくもの。宮であろうと藁屋あろうと永遠のものはないのだから… これは能楽『蝉丸』の中で歌われている 『蝉丸』は世阿弥の作といわれる 物語は、醍…

行方も知らぬ 恋の道かな

由来の門(と)を 渡る舟人 かぢを絶へ 行方も知らぬ 恋の道かな 曽禰好忠 百人一首にも採られている歌 作者の曽禰好忠は歌の名手として知られていたらしく、好忠自身もその自信と誇りがおおいにあったようだ 好忠は丹後の国の役人だったことから人々から「そ丹…

迎へを行かむ 待つには待たじ

君が行き 日(け)長くなりぬ やまたづの 迎へを行かむ 待つには待たじ 軽大郎女(かるのおおいらつめ) 奈良時代頃までは、異母兄妹での結婚は認められていたようで、天皇の結婚にも幾例かみられる 母系社会の名残からか、子供達は各々の母親のもとで養育され監…

人には告げよ 海人の釣り舟

わたの原 八十島(やそしま)かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(あま)の釣り舟 小野篁(たかむら) この歌は小野篁が隠岐の島へ一時的に流罪になった時の歌 小野篁はユニークなエピソードのある興味深い人物だ 最もユニークなのが、昼は官職には就き、夜は…

難波潟 短き葦の 節の間も

難波潟 短き葦の 節(ふし)の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや 伊勢 百人一首にも採られているこの歌は 伊勢 という女流歌人の作 時間の短さを干潟の芦の節と節の間の短さに例える 恨み言も歌になれば芸術に昇華する この時代の歌に難波の様子がいくつか登…