行方も知らぬ 恋の道かな
由来の門(と)を 渡る舟人 かぢを絶へ
行方も知らぬ 恋の道かな
曽禰好忠
百人一首にも採られている歌
作者の曽禰好忠は歌の名手として知られていたらしく、好忠自身もその自信と誇りがおおいにあったようだ
好忠は丹後の国の役人だったことから人々から「そ丹」と呼ばれた
その呼び名には少なからず嘲笑の響きがあったと思われる
好忠の詳しい出自は不明であるが、宮中で大勢を占めていた藤原氏等の氏族や、あるいは皇族の流れの氏族ではなく、いわば一地方役人にすぎない
いくら歌に自信があったとて宮中の者からは一段低く見られたに違いない
好忠の奇抜と見える行動も、そういった偏見対する反骨心やプライドからだったかもしれない
上の歌などは映像が浮かんでくるような現代の楽曲にもなりそうなみずみずしい歌
流れが複雑な由良の門を渡る舟人がまるでかじをとれずに波間に漂うかのように、この恋の行方もいったい何処へたどり着くというのか…(私訳)
■由良の門を 渡る舟人 舵を絶へ
行方も知らぬ 恋の道かな