古歌集

万葉集・古事記・百人一首・伊勢物語・古今和歌集などの歌の観賞記録

禊ぞ夏の しるしなりける

f:id:yukifumi:20190628215116j:image

風そよぐ   ならの小川の   夕暮れは

                    禊ぎぞ夏の   しるしなりける

                                                          藤原家隆

 

…涼やかな風の吹く、ならの小川の夕暮れ時は、まるで夏越しの祓の行事だけが夏の名残のようである…

 

鎌倉時代初期の歌人家隆の、夏になれば必ず口づさみたくなる歌

 

夏越し祓えが行われる旧暦の6月の終わりは、今の暦の7月終わり頃なので、まだまだ残暑が残っている時期

 

風流人ならではの季節の先取りか、または早くそうなってほしい願望も含めてか

 

夏越しの祓えには、疫病の流行るこの季節をなんとか乗り越えようという思いがある

 

平安中期の醍醐帝の頃までは大宝律令に規定された宮中の行事として、6月と12月の晦(つごもり)に、大祓(おおはらえ)の神事が執り行われたようだ

6月は、『六月(みなつき)の晦の大祓』という祝詞を中臣氏が皆の前でよみあげたという

 

祓えとは、これまでの罪を川に流し浄化することを意味したようで、紙で作った人型に息を吹きかけ罪を人型にうつして川に流す

そういった行事が形を変えて一般の人々の間でも無事に夏を乗り切る行事として変遷したのだろう

 

カモ神社に流れる小川のそばで、ひと時の涼やかさを味わう

貴族だった家隆の、一服の清涼剤のような歌

 

 

□  風そよぐ    ならの小川の    夕暮れは

                       禊ぎぞ夏の    しるしなりける