古歌集

万葉集・古事記・百人一首・伊勢物語・古今和歌集などの歌の観賞記録

葛城高宮 わぎ家のあたり

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つぎねふや  山代川を  宮上り  わが上れば

あおによし  奈良を過ぎ  をだて  大和を過ぎ

わが見が欲し国は  葛城高宮  我家のあたり

 

今から約1500年以上前、磐姫(イワノヒメ)が、夫の仁徳天皇の浮気( 当時の天皇は妻を何人か持つのが普通だったので浮気とは言えないが )を聞き付け、外出先の綴喜郡辺りから川をずっと遡って、故郷の葛城に帰ろう と歌ったもの

磐姫は一般的に 「嫉妬深い姫」 として紹介される

本当にそうだったのか

 

磐姫は、武内宿祢の孫にあたる

武内宿祢とは、天皇5代にわたって仕えた伝説的武人だ

その息子が葛城襲津彦(かつらぎのそつひこ)で磐姫の父にあたる

葛城氏は奈良盆地の南西を支配した豪族で、当時連合政権のようなものだったと思われるヤマト王権にとっても見過ごせない相手だった

その結び付きを深める為に、葛城氏から磐姫を皇后として迎えた

いわば磐姫は大豪族のお姫様で、それだけ高いプライドを持っていてしかりだった

たとえ天皇であろうと、他の女性に目移りするなどプライドが許せなかったのだろう

そして 『 峰々が連なる山城川をさかのぼって奈良を過ぎ、もう少し南の大和を過ぎて、私が見たかったのは葛城の高宮、私のふるさとだ 』と歌います

まるで 『風と共に去りぬ』 のスカーレットが最後に「タラ、私のふるさとに帰ろう」  と言った時のように、故郷には疲れた心をリセットしてくれるパワーがあるのだろう

時代も国も全く違っていても共通する思いがあるところが、古代の歌謡の魅力でもある

 

つぎねふや  山背(やましろ)川を宮上り 

わが上れば  あおによし  奈良を過ぎ

小楯  やまとを過ぎ  わが見が欲し国は

葛城高宮  わぎへの辺り