籠(こ)もよ み籠もち
籠(こ)もよ み籠(こ)もち
ふくしもよ みふくし持ち
この岳(をか)に 菜摘ます児(こ)
家聞かな 名告(の)らさね
そらみつ 大和の国は
おしなべて 我こそ居(お)れ
しきなべて 我こそ座(ま)せ
我〈に〉こそは告らめ 家をも名をも
万葉集第一巻の一番、「天皇の御製歌(おほみうた)」として載っているのがこの歌
古代の日本(大和王朝)において、神にその意向を問う時、標(し)めした特定の土地で《籠一杯に若菜を摘む》など誓いをたててそれを行った
それを「誓約(うけい)」という
なのでこの歌は天皇がたまたま丘を通りかかって娘達に問いかけた歌ではなく、国の安寧か自身の権威の保持等かはわからないが、誓約し歌にして神に届ける真面目な行事のようなものだったと思われる
古代では名前を名告りなさいというのは、私と結婚しなさいと言うことと同義だったようだ
(私訳)良い籠と良いへらを持ちこの丘で若菜を摘む娘よ、家を、名前を名告りなさい
この大和の国は私が隅々まで治めているのだ
私こそが名告ろう〈又は、私にこそ名告りなさい〉
万葉集のはじめにふさわしく、古代の王の堂々としたおおらかさが感じられる歌だ